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◎『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』 創業家をめぐる権力闘争ドラマを読んだ (下)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛を求められている5月の大型連休。その日々、『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』を読んだ。昨日、このブログでアップした『トヨトミの野望』の続編だ。面白くて、一気読みした。

 この『トヨトミの逆襲』は、まだ文庫本になっておらず、昨年12月に小学館から出版された(1700円+税)本である。続編は、豊臣家の御曹司、豊臣統一が主人公。「童顔、つぶらな瞳と品のいい鼻」と作者が描く統一と、御曹司を取り巻くごますり、おべっかの「使用人」たちの社内権力闘争ドラマである。

 前作は、ハイブリッドカー「プロメテウス」の誕生が軸になっていたが、続編は社長に就任した統一が、水素カーの失敗で電気自動車(EV)化が周回遅れになったのを懸命に取り戻そうとする。

 冒頭が意表を突く。敷地3000坪、高さ2・5㍍の煉瓦塀に囲まれた大邸宅の統一宅での早朝の記者会見、いや「朝のおしゃべり」で始まる。統一から一言一句を引き出そうとする記者たち。作者の梶山三郎は、こう書く。

 「地球環境に配慮する次世代車としてトヨトミが開発していたのはEVではなく、水素を燃料とするFCV(燃料電池車)だった。統一の全面指揮のもと、2014年に量産型FCV『ティアラ』を発売、2030年までにすべてのクルマを水素カーとする宣言したもののこれが見事な空振り」

30 『トヨトミの逆襲』


 あせる統一は、航続距離1000kmのEV「プロメテウス・ネオ」を22年に発売するとぶち上げる。統一と同様に「親の七光りのボンボン」首相との会食、米大統領との会合、巨額の投資をするIT企業の社長兼会長への接近、巻線技術を持つトヨトミの下請けだった森製作所の森社長に平身低頭…ドラマは一気に22年へ。

 ボンボン首相とは? 米大統領とは? IT企業の社長兼会長とは? ハハーン、あの男のことか、と固有名詞が出てくるほどだ。しかし、トヨトミでも不可能なほどの巻線技術を持つ森製作所の社長とは誰のことか?

 小説では、この森製作所の森社長がトヨトミの生殺与奪権を持つ男なのである。トヨトミは下請けに対し、「年に2回ずつ、真綿で首を絞めるように(単価を)下げてくる」のだ。“生かさぬよう、殺さぬよう”というトヨトミの下請け単価切りである。

 しかし、統一が注目した時には、すでに森製作所はトヨトミから下請けとして切られていた。統一は、一発逆転の思いを込めて、三重県伊賀市にある「こじんまりした田舎の工場」の森製作所へ早朝にクルマを走らせる…。

 小説では、「勝つか負けるかではありません。生きるか死ぬかです」と統一が記者らに語る場面がある。そう、この自動車会社は、誰もが知っている、あの会社を思うだろう。
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決算・経営計画 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2020/05/06 10:56
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