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◎『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』 創業家をめぐる権力闘争ドラマを読んだ (上)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本が「緊急事態宣言」のなかの5月の大型連休。外出自粛が求められており、手にしたのが『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』(梶山三郎著、小学館文庫850円+税。2016年10月刊行本の文庫本化)である。

 昨年12月に、その続編の『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』が出版されて話題になった。作者は、現役の経済記者で、覆面作家。記者でなければ書けないと思うほど自動車会社の現場をリアルに描いている。

 トヨトミ自動車の全体像を、「豊臣家は教祖、社員は信徒、豊臣市は宗教都市」であり、下請けを「乾いたタオルをぎゅうぎゅう絞る」と、その苛烈な実像を容赦なく活写する。

 そのトヨトミに広告費を頼る新聞、テレビでは描けないトヨトミ自動車の昇進、左遷、愛憎など経営陣のどろどろとした世界を書きつづる著者の力量は圧巻だ。一気に読了した。

 主人公は、2冊ともトヨトミ自動車の創業家の豊臣統一。「銀のスプーンをくわえて生まれた御曹司」と描く。『トヨトミの野望』の方は、1990年代後半にハイブリッド車を発売し、世界1へと駆け上がる時代である。

30 『トヨトミの野望』


 創業家の豊臣新太郎会長に、左遷されていたフィリッピンで見いだされ、社長になった武田剛平がもう1人の主人公。こちらは「能力と胆力、懐の深さ、底知れぬスケール」の大きな男として描かれる。

 武田は、ハイブリッドカー「プロメテウス」を1年前倒しで発売させ、トヨトミ自動車の世界1への道を切り拓く。一方で、密かにトヨトミ自動車を持ち株会社にする計画を進める。

 しかし、次期社長になる御子柴が豊臣会長に密告。武田は会長に、突然、呼び出される。場所は名古屋市郊外の「トヨトミ産業博物館」。ここでの2人のやり取りは手に汗を握るクライマクスだ。

 「わが豊臣家を神棚に祀り上げ、トヨトミグループの実業はお前が全部牛耳るという魂胆だろう」

 武田は、「日本経営者協会」の会長へと引導を渡される。同協会は「産業団体連合会」と一本化になり、“財界総理”へと追い出されるのだ。そして、物語はトヨトミ自動車が赤字に転落するリーマン・ショックへ。

 豊臣会長は、“無血クーデター”で息子の統一を社長に据える。統一は、世界での1000万台のリコールで、アメリカ議会の公聴会に呼び出される。物語は、創業家と「使用人」と呼ばれるサラリーマン社長らとの社内権力闘争である。

 トヨトミ自動車とは、誰もが知っているあの大企業を想起するだろう。
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決算・経営計画 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2020/05/05 11:10
コメント
ハイブリッド車は発売当時は製造現場にとっては、邪魔物でしかなかった点は、全く違うよね。
No title
読み手が「リアルだ!」と思えると言う内容は一般人が手に入る情報を元にリアルっぽく構成されているから。

大河ドラマで史実そのままのポニーみたいな木曽馬よりもサラブレッドの迫力ある馬での騎馬戦がリアルに感じるようなもの。

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