FC2ブログ

◎豊田社長に“寄りすぎ”ても、ベアゼロとは

 「トヨタ・日本製鉄、ベアゼロ回答」――20春闘の回答(3月11日)が出た翌日付(12日)の日本経済新聞の1面見出しです。日本を代表する大企業での7年ぶりのベアゼロがどれほど大きなニュースであったかを示しました。

 特にトヨタは、2兆5000億円もの利益を上げるダントツの日本1の大企業であり、ベアゼロは驚きをもって迎えられました。2000年代に入ってリーマン・ショック時などを除き、トヨタは1兆円から3兆円近くの利益を上げてきただけに、トヨタの回答が春闘の目安になってきました。

 そのトヨタがベアゼロとは! 結成30年の連合の春闘が崩れるのではないかと言われています。この4年間のトヨタの春闘を見てみると、ベアゼロへの道が明らかになってきます(表参照)。

トヨタ自動車の春闘の動き


 2017春闘は、組合が3000円のベアを要求し、会社は1300円を回答しました。豊田章男社長は、「トヨタの労使交渉の『徹底した話し合い』は誇るべき伝統」と組合との労使協調を誇っていました。

 トヨタ春闘が一転するのは18春闘からです。組合はベア3000円を要求。豊田社長は労使協議会で、「100年に一度の危機感を本当に持っているならば…『私と一緒に闘ってくれていないのだろうか』と、寂しい気持ちになっていた」と組合を批判しました。

 「100年に一度」とは、世界の自動車産業が米IT企業などを巻き込んだ電気自動車化、自動運転化など「CASE」や「MaaS」(Mobility as a Service=あらゆる移動手段をつなげる)などと呼ばれる「100年に1度の大変革期」と豊田社長が語っている言葉です。

 「CASE」という言葉は、2016年秋のパリ・モーターショーで独ダイムラーの社長が初めて使ったもので、世界の自動車メーカーとIT企業の「100年に一度」の利益を求める企業競争が本格化したことを表しています。

 豊田社長は、この18春闘で、総額1万1700円としか回答せず、ベアについては「昨年を上回る」と非公表にしました。「トヨタのベアがわからない」と労働界が騒然となりました。

2018春闘 トヨタ集会
(2018春闘の本社地区での春闘集会。20春闘では中止になりました)

 これを受けた形で組合は19春闘で、総額1万2000円を要求するものの、ベア要求額を公表しませんでした。この年は初めて、それまでは非公開だった労使協議会がトヨタの社内報の「トヨタイムズ」のWebで公開されました。異例の公開でした。

 豊田社長は労使協議会で、世界の大企業が自動車をめぐって激しい覇権争いに突入したなかで、「組合、会社とも、生きるか死ぬかの状況がわかっていないのではないか」と一喝。協議会は凍り付いたといわれています。

 豊田社長は、前年に続いてベアを非公表にし、総額1万700円を回答。一時金は、長年の年間満額回答の慣例を破って夏の分しか回答しませんでした。

 組合執行部は、「トヨタがおかれている状況の認識の甘さを深く反省」すると豊田社長に謝罪する文章を組合の「評議会ニュース」に掲載しました。豊田社長は、冬の一時金については、秋に労使協議会を開き直し、回答しました。

 こうしたなかで組合執行部が評議会に提案した春闘妥結案は、反対1、保留1が出る異例の事態になりました。一時金に対しは、「職場からは『会社に寄りすぎているのではないか』との声あり」と厳しい批判が出ました。

 今年の20春闘では、組合はベア要求額を非公表にし、総額1万100円を要求しました。しかも、「頑張った人に厚く配分」するとの人事評価を基にしたベア配分を組合が求めました。

 西野勝義委員長は、外部から「成果主義を組合側が先導するのか」「格差ベア」「それでも組合か」などの“誤解”があったと語りました。

 組合は、長年続けてきた工場ごとの春闘集会を中止しました。赤旗を立て、掛け合いコールをしてきた春闘の風景が消えたのです。これほど豊田社長に“寄りすぎ”ても、回答は総額で前年より2100円下回る8600円で、ベアゼロでした。

 豊田社長は、「雇用だけは何としても守り抜く」と労組、組合員に約束する一方で、「高い水準にある賃金を引き上げ続けるべきではない」などとしてベアゼロを回答したのです。

 この4年間の春闘を見直し、春闘のあり方を職場で真剣に議論することが求められているでしょう。それはトヨタの労働者だけに限らず、日本の労働者全体にかかわっているからです。
スポンサーサイト



20春闘 | 2020/03/12 17:45