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◎倉本聰の“遺言” 『やすらぎの刻 ~道~』 (上)

 テレビ朝日で放送されている倉本聰(84歳)脚本のドラマ『やすらぎの刻 ~道~』が好評だ。昼の時間帯と朝の時間帯(BS朝日)の月~金曜日、1年間放送するという。このドラマを見ながら、これは倉本聰の“遺言”だと思った。

 ドラマは、往年のスターが入居する老人ホーム「やすらぎの郷」に入居した脚本家の菊村栄が執筆したシナリオ『道』が原作。戦前のアジア・太平洋戦争を生き抜いた無名の夫婦の壮大な物語で、山梨県の山村を舞台に、浅井しの・根来公平の生涯を描いたものである。

 1936年(昭和11年)、小野ケ沢でドラマは始まる。5月末、ドラマは1つの頂点を迎える。公平の兄、三平は恩師から本を預かる。山奥の木の根っこの穴に隠していたその本を取り出し、焼くシーンだ。

 暗闇に本の題字が浮かぶ。『軍旗』だ。プロレタリア作家の小林多喜二の小説「一九二八年三月十五日」のタイトルが表紙に記載されている。多喜二が実際に書いたのは『戦旗』である。

12 やすらぎ 多喜二2 (2)

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12 やすらぎ 多喜二3

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 多喜二は、非合法だった日本共産党に入党。侵略戦争反対の活動をしていたが天皇制政府の大弾圧「三・一五事件」が起きる。逮捕、拷問された多喜二が怒りをこめて描いた作品だ。日本では終戦まで発禁の書だった。

 そうした作品を掲載した『戦旗』を持っていたら特高警察に捕まるのだ。その怖れをいだいた叔父の鉄平や三平が取り出して焼くのだ。恐ろしい思いでそれを見守る公平…。

 倉本聰は、昼の時間帯(BSでは朝の時間帯)にこうした息詰まるようなシーンを堂々と描く。最近のドラマではあり得ないような迫力で、言論、出版、集会の自由のひとかけらもなかった戦前の息苦しい空気を、テレビを見ている視聴者のお茶の間に放り投げるのだ。

 なぜ、倉本聰はこんな重いテーマのドラマを書いたのだろうか?

          ◇

 この記事は、9月3日にアップする予定でしたが都合により前日にアップしました。
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メディアから | コメント(0) | トラックバック(0) | 2019/09/02 09:19
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