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◎トヨタなどを描いた中日新聞記者の『ルポ 過労社会』

 通常国会(9月27日まで)で、「戦争法案」(安保法制)を最優先する安倍政権のもと、「残業代ゼロ法案」は廃案になります。しかし、日本経団連や大企業の意を受けて、安倍政権は秋の臨時国会にも再提出してくるでしょう。

 その情勢のなか、タイムリーな本『ルポ 過労社会』(副題「8時間労働は岩盤規制か」、ちくま新書)が8月に出版されました。共著に『検証 ワタミ過労自殺』がある中日新聞の中沢誠記者の力作です。

『ルポ 過労社会』


 副題にあるように、安倍政権が「世界で1番、企業が活動しやすい国にする」と称して、労働者保護ルールを根底から崩し、企業のための規制緩和をねらっているからです。

 このなかの注目すべき取材は、東証1部売り上げ上位100社の36協定の上限時間を洗い出したことです。36協定について、企業が届け出る必要がある全国の労働基準監督署へ情報公開請求しました。

 最長は、関西電力が193時間(月当たり)、三菱自動車が160時間、ソニーが150時間、東芝が130時間、トヨタ自動車が80時間…などと厚労省が「過労死ライン」としている80時間以上の企業が7割にものぼりました。

 社員を過労死に追い込むような協定を結びながら、8時間労働制をとっぱらい、どれだけ働いても残業代をゼロにするというのが、安倍政権が「高度プロフェッショナル制度」と呼ぶ「残業代ゼロ」法案です。

 対象者は、研究開発職や為替ディーラー、アナリストなどで、年収が1075万円以上としています。トヨタでは、研究開発職は約2万人を数えます。

 中沢記者は著書の第4章「すさんだ職場」で、トヨタの具体的な実態について16ページにわたって詳細にルポしています。

過労社会のページ


 なかでも2006年の正月に過労死したカムリのチーフエンジニアの取材は出色です。本社の前にあるテクニカルセンターで働き、「車を作り上げる喜びや、やりがいを感じ、仕事が止まらなくなるんです」と亡き夫について語る妻。

 「今日もアドレナリンが出っぱなしだった」といって笑っていた夫は、帰らぬ人となってしまいます。妻は語ります。「トヨタは、あれだけ車の安全性、安全性って言いながら、社員の安全はどこまで考えているのか」――。

 トヨタの社員、特に「車を作り上げる喜びで、仕事が止まらなくなる」というテクニカルセンターで働く技術者には、ぜひ読んでほしい本です。

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職場は今 | コメント(4) | トラックバック(0) | 2015/09/21 09:40
コメント
No title
今度は『残業代ゼロ』法案ですね。
安保法案のように強行採決されるでしょう。
だらだら仕事せず、定時を目指して頑張ってくださいねぇ~(笑)!
久しぶりに見た…盆以来かな

安保法案は最初に戦争法案とか言っちゃった時点で情緒的になる流れでダメでしょ。
民主の人もデモに合流しちゃってw
隣の国は抗日戦勝バンザーイとかやってんのにw

中国大使館に行かないのはなぜなのか?
No title
中国はトヨタにとって巨大な市場です。喧嘩してはいけないでしょう。
No title
7月にロシアに出張していた若くて優秀な技術者が、突然死した。自殺じゃないかという噂を聞きました。

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